SSブログ

日経の社説があまりにも恣意的すぎた [交通]

未だに……?の続き的なもの。

社説で何社かとりあげていますが,日経の社説が……。 以下,2009年7月9日付け日本経済新聞社説「社長を起訴したJR西事故」より引用。(略)の一文は引用者による省略。

死亡107人、重軽傷562人の惨事は、きつい曲線路に制限速度を大きく超えて電車が進入したために起きた。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の最終報告(07年6月)によれば、もしカーブの手前に新型自動列車停止装置(ATS)が設置してあったなら「事故発生は回避できたと推定される」。

(略)

事故調査委の報告も両論併記のような書き方をしており、ATSを設置していなかった無理からぬ事情があるとの見方を「曲線の速度超過による事故は(中略)死傷者は出ていない。国の規制もなく緊急性の認識はなかったとされる」と記す一方で、現場のカーブ手前のATSの「整備は優先的に行うべきだった」とも指摘している。

事故調の報告書の230ページ,PDFでは241ページ,【3.10.2 尼崎駅~宝塚駅間におけるATS整備に関する解析】の引用だと思うのですが……。そこにはこう書いてあります。 以下,航空・鉄道事故調査委員会 (現運輸安全委員会) 「西日本旅客鉄道株式会社 福知山線塚口駅~ 尼崎駅間 列車脱線事故 鉄道事故調査報告書」より引用。

しかし、事故現場の右曲線については、現在の線形となったのが2.8.1 に記述したように平成8年12月であり、また2.21.6 に記述したように簡略な計算式により試算した転覆限界速度(本件列車1両目定員150名乗車時)104km/h をその手前の区間の最高速度120km/h が大きく超えていたことから、同曲線への曲線速照機能の整備は優先的に行うべきであったものと考えられる。

また、もしP曲線速照機能が使用開始されていれば、本件列車のように本件曲線に制限速度を大幅に上回る速度で進入しそうな場合には、本件曲線の手前で最大Bが作動し、本事故の発生は回避できたものと推定される。さらに、もしP分岐速照機能が使用開始されていれば、宝塚駅進入時の分岐器の箇所における大幅な速度超過は発生せず、P分岐速照機能によるブレーキ作動等により、本件運転士が分岐器の開通方向に気付く、眠気による意識レベルの低下がなくなるなどしてSWロング地上子5・6RQ1による非常B作動もなかったものと考えられる。

「新型自動列車停止装置 (ATS-Pのことか?) を設置していれば」事故を回避できたのではなく,「P曲線速照機能が使用開始されていれば」事故を回避できた,と言っています。 さらに,元々拠点P型のATSへの換装中で,拠点Pでは曲線速照を有効にしているために「P曲線速照機能」といっているにすぎず (だから使用開始と続く),予定がなければ「曲線速照機能が使用されていれば」となっていたであろうと推測されます。

さらに,日経社説後段で引用している「整備は」の対象は,報告書を読む限り「曲線速照機能」の整備であるはずです。つまり,ATS-P の整備が回避に必須だったとは書いていません。

都合よく分断して引用されたのでは,引用される方もそれを読む方もたまったものではないです (だから私は今回,段落単位で引用しているわけですが)。 社説に書くくらいであれば,ちゃんと調べてほしいものです。


コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

未だに……?OpenOffice.org 3でISO.. ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。